TFT液晶とは?構造や動作原理、TN・VA・IPS型の違いを解説
2024.03.04
TFT液晶とは、薄膜トランジスタを使用した液晶ディスプレイです。TFT液晶の構造や動作原理、TFT液晶の種類であるTN型・VA型・IPS型の違いを解説します。
目次
TFT液晶とは?構造や動作原理、TN・VA・IPS型の違いを解説
現在では液晶ディスプレイの主流となったTFT液晶ですが、その概要や仕組み、いくつかのパネルの種類があることや、それぞれの特徴など、実は詳しく理解していないという人も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、TFT液晶の構造や動作原理、さらにはTN型・VA型・IPS型といった異なる種類のディスプレイの違いを解説。併せて、TFT液晶ディスプレイの選び方をご紹介します。
TFT液晶とは、薄膜トランジスタ(TFT)を使った液晶ディスプレイのこと
TFT液晶(Thin-Film Transistor Liquid Crystal Display)は、薄膜トランジスタ(TFT)を使ったアクティブマトリックス方式の液晶ディスプレイの一種です。アクティブマトリックス方式とは、液晶ディスプレイなどの駆動方式のひとつで、ディスプレイの各画素(ピクセル)にアクティブ素子(スイッチング素子)を配置し、画素ごとに信号のオン・オフ制御を可能にする方式のことです。
TFT液晶は、ガラス基板上の各画素にアクティブ素子である微細な薄膜トランジスタがそれぞれ配置されており、画素ごとに電圧をコントロールすることにより高速かつ正確な色や明暗の表示が可能になります。
TFT液晶の技術は、従来の液晶ディスプレイに比べ、応答速度や表示色数をはじめとする、さまざまな点で性能が向上しているため、現在ではスマートフォンやタブレット端末、テレビ、PCモニター、カーナビ、家電製品といった、多くのデバイスで利用されています。
TFT液晶の構造
TFT液晶は、薄膜トランジスタおよび透明な画素電極を含むガラス基板、そしてRGBカラーフィルターと透明な対向電極を含むガラス基板が液晶層を挟んで配置されています。
また、ガラス基板の外側には偏光板が貼り付けられ、ディスプレイの裏面にはバックライトが設置されるのがTFT液晶の構造です。
数多くの画素で構成されるTFT液晶ディスプレイは、フルカラー表示を実現するために、各画素はRGB(赤、緑、青)の3つのサブ画素から成り立っています。
例えば、Full HD(フルハイビジョン)解像度のスマートフォンでは約622万個のサブ画素(1,080×1,920×3=622万800)が存在しますが、これらのサブ画素を正確に制御するために、TFT液晶ではそれぞれの画素に薄膜トランジスタが配置されているのです。
そのため、TFT液晶ディスプレイは従来の液晶ディスプレイ(LCD)よりも応答速度が速く、高いコントラストの画像表示が可能です。
TFT液晶の動作原理
TFT液晶の動作原理は、液晶の特性を活かした従来の液晶ディスプレイに、薄膜トランジスタの技術を組み合わせたものです。
固体の結晶と液体の性質を併せ持つ液晶は、電圧を加えることで光学的特性が変化するという特徴があります。液晶ディスプレイではその特性を活かし、液晶分子に電圧をかけることで配向を変化させ、光の透過率を制御することが可能です。
一方、液晶分子の層を挟み込む、ガラス基板上の画素電極に個別に配置された薄膜トランジスタは、いわゆる電子スイッチのような役割を果たし、それぞれの画素に対して正確な電圧制御を行います。
この電圧の変化により液晶分子の配向を制御し、偏光板を通過する光の透過率が変わることで、カラーフィルターを通るバックライトの光をコントロールして、画素ごとに特定の色を透過します。
TFT液晶ディスプレイはこのようなメカニズムにより、鮮やかなフルカラー画像を映し出すことができるのです。
TFT液晶の種類
現在、液晶パネルの主流であるTFT液晶には、主に「TN(Twisted Nematic)型」「VA(Vertical Alignment)型」「IPS(In-Plane Switching)型」の3種類があります。それぞれ特徴が異なるため、用途や好みに応じて選ぶことが大切です。
ここでは、TFT液晶の各方式のメリット・デメリットについて解説します。
TN型ディスプレイ
TN型ディスプレイは、液晶層内の分子のねじれを電圧によって調整し、背面からの光の通過量を変化させることで画像を表示する方式です。電圧オフで白色、電圧オンで黒色になる「ノーマリーホワイト」のTFT液晶パネルで、一般的にPCモニターやゲーミングモニターなどの用途で多く普及しています。
・TN型ディスプレイのメリット
TN型ディスプレイの最大のメリットは、応答速度の速さです。それにより素早い動きを表示させることができ、ゲームや動画を楽しむ用途に向いているとされています。製造コストが低く、ほかの方式に比べて手頃な価格で提供されているほか、発光効率が高く消費電力が少ないため、コスト面でもメリットのある選択肢といえます。
・TN型ディスプレイのデメリット
TN型ディスプレイのデメリットは、視野角が狭く色再現性に劣ることです。液晶分子のねじれの状態により透過率を調整するため、斜めから見たときと正面から見たときで、色や明るさに違いが起こりやすい弱点があります。また、液晶分子の並びが不均一なことから完全な遮光ができず、コントラスト比は低めになります。
VA型ディスプレイ
VA型ディスプレイは、電圧を加えることで液晶分子を垂直方向から水平方向へ配向させることで光を通し、画像を表示させる方式です。電圧オフで黒色、オンで白色になる「ノーマリーブラック」のTFT液晶で、高コントラストで締まった深い黒色を表現できるのが最大の特徴といえます。
・VA型ディスプレイのメリット
VA型ディスプレイのメリットは、黒色の表現力が高く、高コントラストの映像が美しく表示されることです。また、従来よりも視野角が広くなっていることもメリットのひとつです。
・VA型ディスプレイのデメリット
VA型ディスプレイのデメリットは、ほかの方式に比べて応答速度が遅い点です。高速で画面が切り替わるゲームなどでは、フレーム落ちが発生することがあります。また、視野角による色や輝度の変化が大きい傾向であるのもデメリットです。
IPS型ディスプレイ
IPS型ディスプレイは、水平方向の液晶分子を電圧により横方向に回転させて光量を調整し、画像を表示する方式です。VA型と同じく電圧オフで黒色、電圧オンで白色になる「ノーマリーブラック」のTFT液晶パネルで、広い視野角と高い色再現性といった性能の高さが特徴のディスプレイといえます。
・IPS型ディスプレイのメリット
IPS型ディスプレイのメリットは、広い視野角と色再現性の高さです。特に視野角が広く、横から見ても色の再現性が崩れず、どの角度からでも美しい画質を楽しむことができます。
・IPS型ディスプレイのデメリット
IPS型ディスプレイのデメリットは、ほかのパネルに比べて応答速度がやや劣ることです。しかし、最近では高速化されたモデルも登場しています。また、性能が優れている分、販売価格も高めであることもデメリットのひとつです。
TN型・VA型・IPS型ディスプレイの違い
TN型・VA型・IPS型ディスプレイの主な違いについて、視野角、コントラスト、応答速度、色再現性、価格の項目で表にまとめました。製品の用途に応じて、それぞれのメリット・デメリットを把握して選ぶことが大切です。
■TFT液晶ディスプレイの特徴
TN型 | VA型 | IPS型 | |
視野角 | 狭い | 普通 | 広い |
コントラスト | 普通 | 高い | 低い |
応答速度 | 速い | 遅い | 普通 |
色再現性 | 低い | 普通 | 高い |
価格 | 安価 | 普通 | 高価 |
TFT液晶の応用例
TFT液晶ディスプレイの応用例としては、一般消費者向け製品としての用途と、ビジネス・産業向け製品や組み込み部品としての産業用途に大別されます。ここでは、TFT液晶の主な使用例について見ていきましょう。
一般消費者向け製品
TFT液晶は、スマートフォンやタブレット端末、テレビ、PC、カーナビ、電子楽器のほか、洗濯機や電子レンジといった生活・調理家電など、小売店で購入できる一般消費者向けの製品に広く使用されています。特にスマートフォンでは、最新技術を駆使した高精細で明るいTFT液晶ディスプレイが採用されるケースが多く見受けられます。
ビジネス・産業向け製品
TFT液晶は、銀行のATMや駅の券売機のほか、OA機器といった日常生活でよく見かける製品にも使用されています。
また、医療機器や計測器など、一般にはあまり目にすることのないビジネス・産業向け製品のディスプレイとしても活用されています。
産業用途の部品
一般消費者向け製品やビジネス・産業向け製品の製造における、組み込み部品としてもTFT液晶ディスプレイは使用されています。
これらはTFT液晶モジュールやTFTモジュールと呼ばれ、特にスマートフォン用が最も一般的です。そのほか、スマートグラス用の超小型ディスプレイから、大型テレビやデジタルサイネージに使われる大型ディスプレイまで、さまざまなサイズが存在します。
TFT液晶ディスプレイの選び方
TFT液晶ディスプレイを選ぶ際には、画面サイズや解像度、液晶パネルの種類など、さまざまな要素をもとに検討する必要があります。ここでは、それぞれの要素について選ぶポイントをご説明します。
画面サイズ(インチ)
製品の設計において、液晶パネルの画面サイズはユーザーインターフェースと携帯性のバランスを考慮して選ぶことが重要です。小型デバイスにはコンパクトな画面サイズ、表示する情報量が多い製品には大型の画面サイズが適しています。
解像度
液晶パネルの解像度も、製品の用途に応じて選ぶことが大切です。高解像度な液晶パネルは詳細な情報を表示する際に適しており、特に高品質な画像や複雑なデータが必要な製品で必要とされます。
反対に、産業用のモニターなど高画質が必須でないケースでは、コストを考慮して、それほど解像度の高くない液晶パネルを選ぶのも選択肢のひとつです。
液晶パネルの種類
TFT液晶のパネルには前述のとおり、TN型、VA型、IPS型があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。一般消費者向けからビジネス・産業向けまで、どのような製品に使用するのか、その用途に合わせてそれぞれのパネルの特徴やコストなどを考慮しながら選ぶことが重要です。
タッチパネルの有無
液晶パネルにタッチパネルを採用することで操作性が良くなり、ユーザー体験が向上します。一方で、コストの増加を考慮する必要があります。
製品のタイプによって操作性を重視する場合には、タッチパネルありを選択すると良いでしょう。
インターフェース仕様
インターフェースの仕様は、製品の互換性と接続要件にもとづいて選ぶ必要があります。特にMCU(マイコン)と接続するためには、適切なインターフェースがあるものを選択することが重要です。
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