ドライバーICとは?種類や役割、選び方をわかりやすく解説
2024.03.28
ドライバーICとは、電子機器において各種部品を制御するための集積回路のことです。ドライバーICの種類や役割のほか、動作原理、選定方法について解説します。
目次
ドライバーICとは?種類や役割、選び方をわかりやすく解説
ドライバーICは、液晶ディスプレイやモーターなどの電子機器を駆動・制御するために、欠かせない集積回路です。
この記事では、ドライバーICの基本的な概念を紹介するほか、ドライバーICの種類や役割、動作原理、選定方法などについて解説します。
ドライバーICとは、電子機器の電子部品を制御するための集積回路のこと
ドライバーICは、電子機器におけるさまざまな電子部品を制御するための集積回路です。大きな電流や高速な動作が求められる場合に、信号や電力の増幅・変換を行い、デバイスの駆動を効率的かつ正確に行います。
このドライバーICは、モーターやディスプレイ、LED照明などの動作を制御する際に用いられるのが一般的です。特に、液晶ディスプレイにおけるドライバーICは、電子部品の小型化やディスプレイの高精細化、省電力化などの実現に欠かせないものとなっています。
ドライバーICの種類と役割
ドライバーICにはさまざまな種類がありますが、ここでは液晶ディスプレイの制御に使われる「LCDドライバーIC」と「LCDコントローラードライバーIC」について紹介します。それぞれの特徴と役割は、下記のとおりです。
LCDドライバーIC:液晶ディスプレイの表示を制御するためのIC
LCDドライバーICとは、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)の表示を制御するための集積回路を指します。
液晶ディスプレイは、液晶を挟む2枚の透明電極に交流電圧を印加することによって画像が表示される仕組みです。このプロセスにおいて、LCDコントローラーから送信される表示データにもとづき、LCD内にある個々の画素(ピクセル)やセグメントに対して、所定周波数による交流信号の印加を制御することが、LCDドライバーICの役割です。
この制御を通じて入力された信号を、表示可能なデータ形式に変換して出力するLCDコントローラーによって生成された画像が、液晶ディスプレイ上に正確に再現されます。
LCDコントローラードライバーIC:高度なディスプレイ表示の制御機能を内蔵したIC
LCDコントローラードライバーICは、LCDドライバーICの機能に加え、画像データの処理や表示のためのタイミング制御など、より高度な液晶ディスプレイの制御機能を内蔵した集積回路です。
タイミングコントローラーや電源、画像メモリなどが内蔵され、表示データの処理から画面表示までの一連の流れを高度に制御することができます。より複雑なグラフィックや高解像度なディスプレイの制御に向いているため、スマートフォンやタブレット、高機能な情報表示パネルなど、多機能で高品質な表示を求める製品に使用されるのが一般的です。
液晶ディスプレイにおけるドライバーICの仕組み
液晶ディスプレイの表示制御において、ドライバーICはどのように使用されているのでしょうか。ここでは、液晶ディスプレイの表示制御におけるドライバーICの仕組みについて解説します。
LCDドライバーICの仕組み
LCDドライバーICは、液晶ディスプレイの各セグメントを制御するためのSEG(セグメント)ドライバーと、走査電極を制御するCOM(コモン)ドライバーにより、ディスプレイ表示を制御しています。SEGドライバーが「何を」、COMドライバーが「どこに」表示するかを決めることで、液晶ディスプレイ上に画像や文字を形成する仕組みです。
表示データは、SEGドライバーにシリアル(一列)形式のデータとして送られ、画面上でどの画素が表示されるかが決定されます。次に、COMドライバーが画面を横切る走査線に沿って動作し、設定された駆動周波数、Duty(画素を点灯させる時間の割合)に従い、画面の最上部から一行ずつ順にスキャンされます。このプロセスにより、画面全体にわたって画像の均一な表示が可能です。
液晶ディスプレイの駆動条件や表示タイミングは、外部のタイミングコントローラーで制御され、液晶を駆動するために必要な電圧は外部の電源回路から供給されます。つまり、LCDドライバーICは、表示に必要なSEGドライバー、COMドライバーのみのシンプルな構成であり、そのため「単純ドライバー」または「ピュアドライバー」とも称されます。
■LCDドライバーICのブロック図
LCDコントローラードライバーICの仕組み
LCDコントローラードライバーICは、SEGドライバーとCOMドライバーの機能に加え、タイミングコントローラー、電源回路、表示データを一時的に保存する画像メモリも内蔵しています。これらの内蔵機能を用いて、表示データの処理から画面表示までを一連の流れの中で高度に制御するのが、LCDコントローラードライバーICの仕組みです。
このICでは、液晶ディスプレイを制御するコンピューターなどのホスト側からは、通信用配線とデータ線を接続するだけなので、製品開発がスムーズに進むというメリットがあります。また、必要な周辺部品も最小限に抑えられるため、コストの削減にもつながるでしょう。
LCDコントローラードライバーICは現在、モノクロLCDからカラーLCDまで、幅広い液晶ディスプレイに採用されています。
■LCDコントローラードライバーICのブロック図
液晶ディスプレイの制御における各部品の機能と役割
液晶ディスプレイの表示には、SEGドライバーとCOMドライバーのほか、タイミングコントローラーなどの電子部品による適切な制御が必要です。ここでは、液晶ディスプレイの制御において、それぞれがどのような機能を持っているかを紹介します。
SEGドライバー・COMドライバー:液晶ディスプレイ上の特定の画素における表示を制御する
SEGドライバーとCOMドライバーは、液晶ディスプレイ上で特定の画素(マトリクス)を表示するかどうかを制御するための重要な役割を担っています。表示したい画素には「選択電圧」を、表示させない画素には「非選択電圧」をかけることで、どの画素を光らせるかを制御しています。画素の制御はタイミングコントローラーが行い、データ信号と選択信号を適切に出力することで、画面全体にわたる正確な表示が可能です。
その結果、選択電圧と非選択電圧の適用によって、液晶分子の配向が変化し、画素の明るさや色が決まります。つまり、この電圧の制御によって、液晶ディスプレイは画像や文字を鮮明に表示することができるのです。
タイミングコントローラー:フレーム周波数や解像度などのパラメーターを設定する
タイミングコントローラーは、液晶ディスプレイが正確に画像を表示するために必要な機能です。表示したい内容に応じて、画面の更新速度であるフレーム周波数や解像度、走査線数、画素の明るさを調整するための設定であるDutyとBias、画面の明暗を決めるコントラスト電圧値など、多くのパラメーターを細かく設定します。
これらの設定にもとづき、タイミングコントローラーはSEGドライバーとCOMドライバーに指示を出し、各ドライバーが液晶ディスプレイ上の正しい位置に正確な色と明るさで画像を表示するように制御しているのです。
電源回路:液晶ディスプレイのON/OFFに必要な電圧をドライバーICに供給する
電源回路は、液晶をON/OFFするために必要な電圧を作り出し、ドライバーICに供給する役割を担っています。この電源回路は、液晶ディスプレイが正しく動作するために欠かせない重要な部分です。
電源回路では、電圧変換器やレギュレーターなどの電子部品が使用され、安定した電圧をドライバーICへ供給します。これらの部品は、さまざまな入力電圧を液晶ディスプレイの動作に適したレベルに調整する役割を果たしています。
画像メモリ:液晶ディスプレイに表示するビットマップデータを一時保存する
画像メモリは、液晶ディスプレイで表示するビットマップデータ(画素の配置と色情報を含む画像データの一種)を一時的に保存する場所です。
この画像メモリを内蔵するコントローラードライバーICは、一時保存されたビットマップデータをSEGドライバー、COMドライバーへ転送し、液晶ディスプレイに表示させます。
ドライバーICの選定方法
ドライバーICを選定する際には、液晶ディスプレイの解像度やインターフェースの互換性などを考慮する必要があります。ここでは、液晶ディスプレイの性能を最大限に引き出すことができる、適切なドライバーIC選びのポイントについて解説します。
液晶ディスプレイの解像度で選ぶ
液晶ディスプレイの解像度は、画素数によって決まります。解像度が高ければ高いほど、表示される画像はより鮮明になります。そのため、ドライバーICを選ぶ際には、ディスプレイの解像度に合わせた適切なタイプを選定することが重要です。
例えば、低解像度の液晶ディスプレイではシンプルな機能を持つドライバーICでも十分ですが、高解像度の液晶ディスプレイではより高性能なドライバーICが必要です。
解像度が異なると、必要な画像メモリの容量やデータの転送速度も変わります。そのため、液晶ディスプレイの解像度に適したドライバーICを選定することで、ディスプレイの表示性能を最大限に引き出すことが可能になります。
- セグメント、アイコンタイプ
セグメント、アイコンタイプのLCDは、表示数が少ない場合に有効です。具体的には、マイコン(MCU)にLCDドライバーポートが搭載されていれば、制御と表示が簡単に行えます。このタイプのメリットは、シンプルな構造であり、消費電力が低いことです。また、低コストで実現できるのも大きなメリットです。ただし、表示数が多くなると制御回路が複雑になるため、ほかのタイプが適しています。 - キャラクタードットタイプ
キャラクタードットタイプのLCDは、横5ドット×縦7ドットを1文字として表示させるタイプです。このタイプのメリットは、コントローラードライバーICを使用することで、内蔵されたキャラクターフォントが活用できる点と、表示制御をコマンドにより簡単に実行できる点にあります。
そのため、さまざまな文字やアイコンを簡単に表示させることが可能となり、ディスプレイの機能性がより高まります。また、表示する内容が多くなっても制御回路がシンプルであるため、開発プロセスが容易になる点もメリットです。 - フルドットタイプ
フルドットタイプのLCDは、高い解像度が求められる場合に適しています。重要なポイントは、コントローラードライバーICが1つのチップで対応できる解像度に合わせることと、必要な解像度に1つのドライバーICで対応できない場合は複数のドライバーICを使用することです。
ただし、この場合には制御するコントローラーや電源生成回路を別で準備し、プリント基板に実装してユニット化するため、開発に手間がかかることが欠点です
インターフェースで選ぶ
ドライバーICを選ぶ際には、使用する環境や目的に合ったインターフェースを選択することも大切です。ディスプレイの種類や仕様の違いを把握し、それぞれの特徴を理解した上で選択することが求められます。
希望する機種のインターフェースに対応するために、マイコンの変更や専用デバイス・変換回路の追加が必要な場合もあります。そのため、汎用性や将来性を考慮して選定することが大切です。
アナログ信号をデジタル信号に変換することが求められる場合は、対応可能なインターフェース回路が必要になります。標準のインターフェース基板で対応可能かどうかを事前に確認することも重要です。HDMI信号と接続を希望する場合も、標準の変換回路を備えた製品が存在するので、適切な相談がおすすめです。
また、比較的簡単なデータ伝送で済むモノクロ液晶(パッシブLCD)と、より多くのデータを高速に伝送する必要のあるカラー液晶(アクティブLCD)では、適切なドライバーICが異なります。そのため、それぞれのドライバーICに適合するインターフェースを事前に確認し、ディスプレイの制御に最適なものを選ぶようにしましょう。
- モノクロ液晶(パッシブLCD)の場合
モノクロ液晶(パッシブLCD)では、ホストマイコンに装備されているインターフェースでコントローラードライバーICと直接接続できます。
モノクロ液晶に用いられるインターフェースの種類には、80系/68系の4ビットまたは8ビット、パラレル(複数のデータラインを使用して同時にデータを送受信する方式)、シリアル(1本のデータラインでビットを順番に送受信する方式)、SPI(Serial Peripheral Interface:高速なデータ交換が可能なシリアル通信規格)、I₂C(Inter-Integrated Circuit:マイコン間の低速通信に使用されるシリアル通信規格)などがあり、ディスプレイの用途や性能要件などに合わせて液晶メーカーが選定するのが一般的です。 - カラー液晶(アクティブLCD)の場合
カラー液晶(アクティブLCD)では、ホストシステムのインターフェースに合うタイプのドライバーICを選ぶことが大切です。低解像度で開発時期が比較的古いカラー液晶では、80系/68系の4ビットまたは8ビット、シリアル、SPI、I₂Cのインターフェースで制御できる製品もありますが、その場合には生産中の製品で、かつその生産継続性をチェックすることが必要となります。
RGB24bit(24ビットカラーで、豊富な色彩を表現可能なインターフェース)、LVDS(Low Voltage Differential Signaling:高速データ転送に適した低電圧差動信号伝送方式)、MIPI(Mobile Industry Processor Interface:モバイル機器向けの高速通信規格)など、現行の主要なインターフェースは、いずれかひとつのインターフェースのみ利用可能な標準品もあるため、事前の確認が不可欠です。
■液晶ディスプレイのインターフェースイメージ
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技術的な専門性を持ったスタッフによるサポート体制も整っており、製品の購入前後のご相談にも迅速に対応いたします。ドライバーICの購入に関するご相談やお見積もりは、テスコムまでお気軽にお問い合わせください。
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