マイクロディスプレイとは?仕組みや種類、選び方をわかりやすく解説
2024.03.28
マイクロディスプレイは、高精細な画像を表示可能な超小型ディスプレイです。マイクロディスプレイの仕組みや種類、選び方について解説します。
目次
マイクロディスプレイとは?仕組みや種類、選び方をわかりやすく解説
マイクロディスプレイは、その名のとおり非常に小さいディスプレイでありながら、高い解像度の鮮明な画像を提供できる表示デバイスです。ウェアラブルデバイスやVR・ARヘッドセットなど、最先端の機器に不可欠な技術となっています。
この記事では、マイクロディスプレイの基本的な仕組みや種類をはじめ、最近注目を集めているマイクロOLED・マイクロLEDディスプレイの選び方などについて、わかりやすく解説します。
マイクロディスプレイとは、高解像度の画像を表示できる超小型ディスプレイのこと
マイクロディスプレイは、対角線の長さが0.25インチ(約6.35mm)未満の非常に小さなディスプレイです。超小型かつ薄型でありながら高解像度な表示が可能なため、ユーザーは映し出された映像をディテールまで鮮明に視認することができます。
マイクロディスプレイの優れた特徴は、そのコンパクトなサイズを活かして、小型のデバイスや装置に容易に組み込める点です。自動車や航空機のヘッドアップディスプレイ、スマートグラスなどのウェアラブルデバイス、カメラの電子ビューファインダー、医療機器、スマートウォッチ、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)用のヘッドセットなど、さまざまな電子機器への組み込みが進められています。
特にウェアラブルデバイス、VR・AR関連のデバイスの普及に伴って、その用途は今後さらに広がっていくと考えられます。
マイクロディスプレイの種類
マイクロディスプレイは、主に以下の種類に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
マイクロOLEDディスプレイ
マイクロOLEDディスプレイは、有機EL技術をもとにした、小型でエネルギー効率がよい自発光型のディスプレイです。有機EL(Organic Electro Luminescence)とは、有機化合物を用いた自発光技術であり、電流を流すことで直接光を発することができます。この有機EL技術を応用した発光素子にあたるのが、OLED(Organic Light-Emitting Diode:有機発光ダイオード)です。
この技術を採用することで、画素サイズを数μm(マイクロメートル:1mmの1,000分の1)まで小型化し、非常に小さいデバイスサイズでありながら、高い解像度と鮮明な色彩表現を実現します。
有機EL技術の最大の特徴は、バックライトを必要としない自発光性にあります。各ピクセルが個別に光を発することで、高いコントラスト比と、真っ黒に近いレベルの黒色を表現することが可能です。その結果、マイクロOLEDディスプレイは鮮明な画像と豊かな色彩を提供することができ、特に暗い環境での使用に適しています。また、消費電力の低さと応答速度の速さも特長です。
マイクロLEDディスプレイ
マイクロLEDディスプレイは、自発光型の先進技術を採用したマイクロディスプレイです。マイクロOLEDディスプレイと同様、各ピクセルが独立して光を発するため、バックライトが不要です。
マイクロLEDディスプレイでは、マイクロサイズのLED(発光ダイオード)を高密度に配することによって、優れた画質と高い輝度を実現します。さらに、各LEDが個別に制御されるため、LEDの発光を完全にオフにした状態で黒色を表現することが可能です。また、LEDは非常に堅牢で消費電力が少なく、長寿命なため、持続可能な製品設計という観点からも価値があります。
LCDマイクロディスプレイ
LCDマイクロディスプレイは、液晶による方式を応用したマイクロディスプレイです。マイクロOLEDディスプレイやマイクロLEDディスプレイとは異なり、自発光型ではありません。
液晶は、液体と結晶の性質を併せ持つ化合物です。この液晶に電圧を加えることで分子の向きを変えることができます。液晶ディスプレイではこの性質を利用し、光を出すバックライトの前に配置された液晶分子に電圧を加えたり、加えなかったりすることで、分子の向きを変えて光の通り道をコントロールします。
これにより、光を透過させたり、遮ったりして画像を表示することが可能です。液晶層の上には赤、緑、青のカラーフィルターがあり、これらを通過する光の組み合わせでさまざまな色を作り出しています。
LCDマイクロディスプレイは、比較的低コストで製造でき、広範な応用が可能です。コントラスト比や応答速度ではマイクロOLEDやマイクロLEDに劣る場合がありますが、技術の進歩によりこれらの欠点を改善し、小型化を実現したマイクロディスプレイも登場しています。
LCoSマイクロディスプレイ
LCoS(反射型液晶方式)マイクロディスプレイは、液晶層をシリコン基板とガラスのあいだに配置したマイクロディスプレイです。この反射型ディスプレイは、高解像度と優れた色再現性、高コントラスト比を提供します。
反射型ディスプレイとは、日光や室内照明など外部からの光を利用して、画像や文字を表示するタイプを指し、自発光型ともバックライト型とも異なる原理で画像を映し出します。このタイプのディスプレイの最も大きな特長は、電力消費が非常に低い点です。
DLPマイクロディスプレイ
DLP(デジタルライトプロセッシング)マイクロディスプレイは、微小なミラー(デジタルマイクロミラー)を利用した反射型のマイクロディスプレイです。
DLPチップは、数万から数百万の微小なミラーで構成されており、これらのミラーが光を反射して画像を作り出します。現状ではコストが高いため、映画館など主に業務用として使われています。
マイクロOLED・マイクロLEDディスプレイの仕組み
マイクロディスプレイ技術の中でも特に注目したいのが、マイクロOLEDとマイクロLEDです。ここでは、それぞれの構造と発光原理を説明します。
マイクロOLEDディスプレイの構造と発光原理
マイクロOLEDディスプレイの基本構造は、薄膜トランジスタ(TFT)バックプレーン上に配置された複数の有機材料層と、その上下に配置された電極から成り立っています。有機材料層には、電子と正孔(ホール)を注入するための層と、これらが再結合して発光する発光層が含まれます。
有機ELの発光プロセスは、電極に電圧を印加することで、有機材料層に電子と正孔が注入されることから始まるのが特徴です。電子と正孔は発光層で再結合し、この過程でエネルギーが放出されます。放出されたエネルギーは光として現れ、この光がディスプレイからの画像を形成します。
この一連のプロセスは、各ピクセルにおいて独立して行われ、画像の各点が個別に光を発することが可能です。その結果、高いコントラスト比と鮮やかな色彩表現が実現されます。
マイクロOLEDディスプレイでは、非常に小さなサイズの有機EL素子が使用されており、これが高解像度のディスプレイを実現しています。
■マイクロLEDの構造図
■マイクロLEDの発光原理
マイクロLEDディスプレイの構造と発光原理
マイクロLEDディスプレイは、非常に小さなLEDを使用し、微細な赤、緑、青のLEDを組み合わせてフルカラーの画像を生成する技術です。
このディスプレイの基本構造は、小さなLEDチップが高密度に配置され、サブピクセルとして機能し、直接光を発して画像を形成します。各LEDは、n型半導体層、発光層、およびp型半導体層からなる半導体材料の層を含みます。これらのLEDチップは、薄膜トランジスタ(TFT)アレイなどの基板上に精密に配置され、電極を介して電気的に駆動される構造です。
マイクロLEDの発光原理は、通常のLEDと基本的に同じで、電圧が印加されると、n型半導体から電子が、p型半導体からは正孔が発光層に注入されます。電子と正孔が発光層で再結合する際に、エネルギーが光として放出され、この光が直接画像を形成する光源となります。
マイクロLEDディスプレイでは、各LEDを独立して制御することが可能です。そのため、非常に高い輝度とコントラスト比、広い色域を実現できるほか、マイクロLEDは非常に高速に反応するため、動きの速い映像も鮮明に表示できます。
■マイクロOLEDの構造図
■マイクロOLEDの発光原理
マイクロOLED・マイクロLEDディスプレイが使われる主な製品
マイクロOLEDとマイクロLEDは、その高い解像度と優れた色彩表現、エネルギー効率のよさなどから、さまざまな最先端デバイスに採用されています。ここでは、具体的な製品例を3つ紹介します。
スマートグラス
スマートグラスは、メガネ型のウェアラブルデバイスです。レンズ部分の内側にディスプレイが搭載されており、装着すると実際に目に見える光景に情報が重ねて投影されます。スマートフォンやPCと接続して使用するタイプや、スタンドアロンで使用できるタイプがあります。
スマートグラスの小さなレンズ部に鮮明な画像や動画を表示するためには、マイクロOLEDやマイクロLEDディスプレイの活用が欠かせません。これにより、ユーザーは自然な視野でメッセージやナビゲーション、ビデオコンテンツなどを視聴できます。
また、エネルギー効率のよさは、デバイスのバッテリー寿命を延ばすことにも有効です。
ウェアラブルデバイス
ウェアラブルデバイスには、先に述べたスマートグラスのほかにも、スマートウォッチやフィットネストラッカーなどが含まれます。
マイクロOLEDやマイクロLEDディスプレイは、そのコンパクトさや高解像度、そして優れた視認性などの特性から、これらのデバイスに広く採用されています。特に、自然光の下での屋外使用時でも鮮明な表示が可能で、ユーザーの操作性が損なわれない点は大きな特長です。
AR・VRヘッドセット
拡張現実(AR)および仮想現実(VR)ヘッドセットは、没入型の体験を提供するために設計されたデバイスです。マイクロOLEDやマイクロLEDディスプレイは、ARおよびVR技術の進化において重要な役割を果たしています。
これらのディスプレイを採用することで、ヘッドセットは非常に高いコントラスト比と応答速度を実現し、リアルタイムで鮮明な画像や動画コンテンツの提供が可能になりました。ユーザーは、現実世界に近いレベルのディテールと色彩を持つ仮想環境に没入できるようになります。
マイクロOLED・マイクロLEDディスプレイの選び方
マイクロOLEDとマイクロLEDディスプレイは、それぞれ独自の特性を持っています。では、それぞれのディスプレイを選ぶ際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
最後に、マイクロOLEDとマイクロLEDディスプレイを選ぶ際に考慮すべきポイントを4つ紹介します。
用途に応じて選ぶ
マイクロOLEDは、非常に鮮明な色彩と深い黒を再現できるため、高いコントラスト比が求められる製品に最適です。また、消費電力が低いため、バッテリー寿命を延ばす必要があるウェアラブルデバイスなどにも適しています。
一方、マイクロLEDは非常に高い輝度を実現できるため、明るい屋外環境での使用に相性がよく、大画面での表示が求められる場合にも優れた選択肢となります。
解像度で選ぶ
解像度は、ディスプレイの画質に直接影響します。マイクロOLEDとマイクロLEDはどちらも高いピクセル密度を持っていますが、高解像度のディスプレイを求める場合には、それぞれに細かな特性の違いを認識した上で選ぶ必要があります。
マイクロOLEDは、高いピクセル密度を活かして細かなテキストや画像を鮮明に表示することが得意です。それに対してマイクロLEDは、大画面での高解像度表示に長けており、特に映画鑑賞やゲームでの使用に適しています。
そのため、ディスプレイに何を表示する必要があるのかを考慮した上で、それぞれのディスプレイを選択することが重要です。
ディスプレイのサイズと重量で選ぶ
デバイスの持ち運びやすさは、ディスプレイのサイズと重さによって大きく左右されます。
ウェアラブルデバイスやモバイルデバイスには、薄型で軽量なマイクロOLEDディスプレイが適しています。反対に、大型ディスプレイや公共の表示板など、サイズや重量の制約が比較的少ない用途には、高い輝度を再現できるマイクロLEDがおすすめです。
コストを考慮して選ぶ
ディスプレイの選択にあたり、コストは無視できない重要な要素です。現時点で、マイクロLEDディスプレイの製造コストは、マイクロOLEDに比べて高い傾向にあります。
ただし、マイクロLED技術の製造プロセスが改善されるにつれて、今後はコストが低減する見込みがあります。初期投資と運用コストを総合的に考慮し、予算内で最良の性能を得られる選択肢を見つけることが肝心です。
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