液晶の種類(TN・VA・IPS)による特徴やパネルの選び方を解説
2024.03.28
液晶パネルの種類(TN・VA・IPS)とその特徴やメリット・デメリット、選び方をわかりやすく解説。用途や要件に合わせて最適な液晶パネルを選ぶ方法を紹介します。
目次
液晶の種類(TN・VA・IPS)による特徴やパネルの選び方を解説
液晶パネルには、主にTN方式、VA方式、IPS方式などの種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
この記事では、液晶パネルの種類やその特徴のほか、それぞれのメリット・デメリットについて解説。また、液晶パネルの適切な選び方も併せてご紹介します。
液晶パネルとは、液晶分子の特性を利用した表示ディスプレイのこと
液晶パネルとは、個体の結晶と液体の特性を併せ持つ液晶を利用した表示ディスプレイを指します。液晶分子に電圧を加えることで、分子の配列や向きをコントロールして光の透過を制御し、ディスプレイに画像を映し出すことが可能です。この特性を利用した液晶パネルは、今ではテレビやパソコン、スマートフォンなど、さまざまなデバイスのディスプレイとして広く使用されています。
▼液晶については、下記の記事をご覧ください。
液晶パネルの構造は、2枚の薄いガラス基板のあいだに液晶分子を挟み込む形で構成されており、その上にカラーフィルターや偏光板が配置されています。電極を通じて電圧がかかると液晶分子が回転し、光の透過率を変えることにより、さまざまな画像を表示することが可能です。
液晶パネルの主な種類
液晶パネルには主にTN方式、VA方式、IPS方式といった種類があり、それぞれ特徴が異なります。ここでは、3つの種類の特徴や仕組みについてご紹介します。
TN(Twisted Nematic)方式
TN方式の液晶パネルは、電圧がオフの状態では白色を示し、電圧がオンの状態で黒色に変わる「ノーマリーホワイト」方式の液晶パネルです。
この方式は、電圧の適用によって液晶層のねじれ具合を変化させ、それによりバックライトの光の量を調節する駆動技術です。構造的には、90°の角度差を持つ2つの偏光フィルターが、水平に配置された液晶層を挟んでいます。
電圧がオフの場合、液晶分子は偏光フィルターに沿って同一方向を指し、層内で徐々にねじれている状態です。このねじれがバックライトの偏光を回転させ、結果として光が透過します。
電圧をオンにすると、液晶層内の分子が垂直に配置され、ねじれの構造が解消されます。電圧が最大になると偏光の回転が停止し、これによりバックライトの光がさえぎられる仕組みです。
VA(Vertical Alignment)方式
VA方式は、電圧オフの状態で黒色、電圧オンの状態で白色に変化する「ノーマリーブラック」方式の液晶パネルです。電圧を加えて、液晶分子のねじれを垂直から水平方向に回転させることで、バックライトの光の透過率を制御します。
電源オフの状態では、液晶分子はガラス面に垂直に配置されることでバックライトの光をほとんど完全に遮光することが可能です。そのため、ほかの液晶パネルよりも深い黒色を表現することができます。
電圧をオンにすると、液晶分子は徐々に水平方向に倒れていき、最大電圧で完全に水平になることで、バックライトの光を最も効果的に透過させる状態になります。
IPS(In-Plane Switching)方式
IPS方式もVA方式と同じく、電圧オフで黒色、電圧オンで白色を表示する「ノーマリーブラック」タイプの液晶パネルです。
IPS方式ではTN方式やVA方式とは異なり、液晶分子が垂直に傾くことはありません。液晶分子を電圧で水平方向に回転させ、その回転度によって光の透過率を調整し、広い視野角と高い性能を実現しているのがIPS方式の基本的な仕組みです。
電圧がオフの場合、液晶分子はガラス面に平行で、偏光フィルターのスリットに対して90°の角度で配置されており、これがバックライトの光を遮断します。
一方、電圧オンの状態では、液晶分子は水平方向に回転し、最大電圧時には90°回転してスリットの方向と一致。これにより、バックライトの光を最も効率良く透過させます。
液晶パネルの種類によるメリット
TN方式・VA方式・IPS方式の液晶パネルには、それぞれにメリットがあります。ここでは、3種類の液晶パネルのメリットを解説します。
TN方式のメリット
TN方式は、応答速度が速いことが最大のメリットです。液晶の動きが速く、画像の残像が少なくなるため、ゲームや動画の再生に適しています。
また、TN方式のパネルは低価格で提供されることが多く、初心者におすすめのディスプレイでもあります。
VA方式のメリット
VA方式は、高コントラストと広い視野角が特徴の液晶パネルです。液晶分子が垂直方向に配置され、光の漏れを抑える構造があるため、黒色の表現力が高く、高コントラストが求められる映画鑑賞や写真編集に向いています。また、広い視野角は、複数人で画面を見る際にも役立ちます。
IPS方式のメリット
IPS方式の最大の特徴は、その卓越した色再現性と広い視野角です。これは、液晶分子が水平方向に配置されるという特性によるものです。この方式のパネルは、グラフィックデザインや画像・動画編集などの色の表現が重要な作業に最適です。
液晶パネルの種類によるデメリット
前述した各液晶パネルのメリットに対して、それぞれのデメリットはどのようなところにあるのでしょうか。次にTN方式・VA方式・IPS方式の具体的なデメリットについて紹介します。
TN方式のデメリット
TN方式のデメリットは、パネルの視野角の狭さや色の再現性の低さです。視野角の狭さでは、斜めの角度からは画面が見えにくく、色の再現性の低さでは、色が薄く見えたり、色が正確に表示されにくかったりするといったことが考えられます。
また、TN方式はその特性上、完全な遮光ができないため黒色が白っぽくなりやすく、コントラスト比を高くできないこともデメリットです。そのため、画像・動画編集やグラフィックデザインなどのプロフェッショナル向けの作業には向いていません。
VA方式のデメリット
VA方式の液晶パネルは、反応速度の遅さがデメリットです。そのため、動画の再生やゲームのように画面の切り替えが速い用途には不向きな場合があります。
また、視野角についてはTN方式よりは広いものの、狭い範囲でしか正確な色を表示できないこともデメリットのひとつです。
IPS方式のデメリット
IPS方式の液晶パネルは、応答速度がやや遅い傾向があるため、動画やゲームには適していない場合もあることがデメリットです。
また、光を完全には遮断できない仕組みのため、コントラスト比があまり高くないこともデメリットといえます。そのほか、IPS方式のパネルは高性能なために、高価なケースが多いという点もマイナス要素のひとつといえるでしょう。
液晶パネルを選ぶ際のポイント
液晶パネルを選ぶには、各液晶パネルのメリットやデメリットも踏まえた上で、用途や予算に応じて最適な一枚を選ぶことが重要です。
ここでは、モノクロ液晶パネルとカラー液晶パネルを選ぶポイントについて、それぞれ解説します。
モノクロ液晶パネルの選び方
モノクロ液晶パネルを選ぶ際には、パネルの外形サイズや構造、さらにはインターフェースの種類など、複数の要素を検討した上で選ぶことが大切といえるでしょう。モノクロ液晶パネル選びの際に考慮すべき主なポイントを解説します。
- 外形サイズや構造を考慮する
モノクロ液晶パネルを選ぶ際には、外形サイズや構造が設置予定の場所や使用目的に合っているかを事前に確認しておくことが重要です。購入を決める前に、設置スペースや形状、取り付け方法などを検討することで、最適なものが見つかるでしょう。 - ラフ図を作成しておく
ラフ図を作成することは、設計プロセスにおいて欠かせません。それにより、設計の初期段階で潜在的な問題を早期に特定し、コスト削減や効率化を図ることができます。
例えば、部品の配置や配線のルートが明確化されることで、組み立て時のトラブルを避けることが可能です。また、ラフ図をもとにチーム内で意見交換を行うことで、設計ミスや改善点が見つかることがあります。 - 電気的制約(入力電圧、消費電流)を確認しておく
液晶パネルの電気的制約を事前に確認しておくことも重要な要素のひとつです。入力電圧や消費電流が適切でないと、性能が低下したり、故障したりする原因となることがあります。そのため、使用環境に適していて、入力電圧や消費電流が適切な範囲に収まるものを選ぶことが大切です。それにより、機器の安全性や効率性が向上することが期待できます。 - 耐久性が高いものを選ぶ
液晶パネルは長期間の使用を想定して、耐久性の高いものを選ぶことが大切です。長期間使用できる製品は、メンテナンスコストが低く、信頼性が高いといえます。耐久性が高い液晶パネルの選び方としては、内部基板の強度や接続部品の品質などを入念に確認しましょう。また、使用環境に応じた防水・防塵対策や耐衝撃性の確認も重要です。 - 適切なインターフェースがあるものを選ぶ
液晶パネルを選ぶ際には、特にMCU(マイコン)との接続など、適切なインターフェースがあるものを選ぶことが重要です。インターフェースが適切でないと、設計や開発の段階で問題が発生し、コスト増やスケジュール遅れが生じることがあります。インターフェースの種類や規格を確認し、ほかの部品との互換性を検討しましょう。また、将来の拡張性も考慮して選んでおくことが必要です。 - LCD・LCMチェックシートを活用する
LCD・LCMチェックシートを活用することも、液晶パネル選びに有用です。チェックシートを用いることで、必要な性能・仕様を網羅的にリスト化し、比較検討することが可能です。また、ベンダーや製品間の違いを把握しやすくなることから、最適な選択がしやすくなることもチェックシートを活用するメリットのひとつといえます。
カラー液晶パネルの選び方
カラー液晶パネルの選び方では、用途や使用する環境のほか、解像度やタッチパネルの有無などのスペック面も重要なポイントです。カラー液晶パネル選びで考慮したい内容は、下記のとおりです。
- 用途やスペースでサイズを選ぶ
カラー液晶パネルは、用途やスペースに応じてサイズを選ぶことが大切です。例えば、スマートフォンやカーナビゲーションなどのデバイスでは小型のパネルが適していますが、デジタルサイネージなどの大型表示では大型のパネルが必要となります。
また、デバイスの筐体内部のスペースも、パネルサイズ選択の際に考慮すべきポイントといえます。 - 用途に応じた解像度を選ぶ
用途に応じた解像度を選ぶことも、カラー液晶パネル選びにおいて大切な要素のひとつです。特定の用途では高解像度が求められる一方、低解像度で十分な場合もあります。
例えば、画像や映像の表示には高解像度が求められますが、単純なテキスト表示なら低解像度でも問題ありません。用途を明確にし、適切な解像度を選びましょう。 - インターフェースの仕様を確認しておく
インターフェースの仕様確認も重要です。インターフェース仕様が異なると、設計や開発に支障が出ることがあります。モノクロ液晶パネルと同様、MCU(マイコン)との接続が可能かどうかなど、仕様を事前に確認し、周辺機器や制御回路との互換性を検討しておくことが必要です。
また、複数のインターフェースに対応したパネルを選ぶことも検討するといいでしょう。 - タッチパネルの有無を検討しておく
最後に、タッチパネルの必要性について検討し、機能の有無について考慮する必要があります。例えば、操作性を重視する場合にはタッチパネル機能付きが望ましいですが、画像や映像を表示するだけなら不要かもしれません。用途を明確にすることで、最適な選択ができるでしょう。
液晶パネルの購入は、専門性の高い技術担当者がそろうテスコムへご相談ください
液晶パネルを選定する際には、解像度やサイズ、応答速度、視野角といった複数の要素を総合的に考慮することが重要です。これらの要素を適切に評価することで、用途に最適な液晶パネルの選択が可能となり、製品の価値を最大限に引き出すことができます。
テスコム株式会社は、液晶パネルを含む各種エレクトロニクス製品の専門商社として、高い技術力と品質管理能力を誇ります。専門性の高い技術部門・品質管理部門を有し、テスコム基準にもとづいて選定された高品質な製品を提供しています。国内外の幅広い製造サプライヤーとの強固な連携により、お客様のニーズに合わせた液晶パネルの選定と購入をサポートします。液晶パネルの購入に関するご相談やお見積もりは、テスコムまでお気軽にお問い合わせください。
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