IC(集積回路)とは?役割や構造、仕組みなどをわかりやすく解説
2024.03.28
IC(集積回路)とは、電子部品を1つの基板の上に集積した回路のことです。ICの役割や構造、仕組みのほか、電子機器製作におけるICの選び方について紹介します。
目次
IC(集積回路)とは?役割や構造、仕組みなどをわかりやすく解説
ICは「集積回路」と呼ばれるように、さまざまな電子部品を1つのチップ上に集積した電子回路です。現在では、ほとんどすべての電子機器や電気製品にICが使用されています。この記事では、ICの役割、構造、仕組みなどのほか、電子機器の製作においてICを選ぶ際に考慮すべきポイントも紹介します。
IC(集積回路)とは、電子部品を1つの基板の上に集積した回路
ICとは、「Integrated Circuit」の略で、トランジスタ、抵抗、コンデンサー、ダイオードなどの電子部品を1つの基板の上に集積した回路です。これらは主にシリコンなどの半導体材料で作られており、シリコン内にそれらの電子部品が形成され、表面には層状に配線が施されています。
ICに用いられるトランジスタなどの電子部品の大きさは、nm(ナノメートル:10億分の1メートル)単位で測定されるほど非常に微小です。ICにはそれらの電子部品が、数mmから20mm程度の大きさのチップの上に、数千万個から数十億個も配置されています。
これらの電子部品が集積されたICは、高度な処理能力と大量のデータを記憶する能力を持っています。この性能を活用して、コンピューターのマイクロプロセッサー(MPU・CPU)、マイクロコントローラー(MCU)、メモリ、センサー、電源回路など多彩な種類のICが開発され、現代の電子機器や情報技術の根幹を支えているのです。
コンピューター、スマートフォン、自動車、医療機器など、ICが中枢部品として用いられている電子機器や電気製品は、枚挙にいとまがありません。これらの技術の応用と発展は、将来も革新的な製品を生み出していくものと期待されています。
ICの歴史
ICの歴史は、1950年代にさかのぼります。1958年、アメリカの半導体企業、テキサス・インスツルメンツ社のジャック・キルビーが初のICを発明し、間もなくフェアチャイルドセミコンダクター社のロバート・ノイスも異なるアプローチでICを開発しました。これらの初期のICは、数個から数十個のトランジスタを1つのチップ上に集積したもので、主に軍事や宇宙航空分野で使われました。
特にキルビーは、ゲルマニウム半導体を使用して、トランジスタだけでなく、コンデンサーや抵抗も1つのチップ上に集積するという革新的なアイディアを生み出しました。キルビーによって作られた最初のICは、1個のトランジスタと3個の抵抗、1個のコンデンサーが組み込まれたもので、この技術は後に配線の集積にも応用され、ICの発展を加速させました。
1960年代に入ると、ICの集積度が飛躍的に向上し、数百個のトランジスタを1つのチップに収められるようになります。これにより、コンピューター産業でのICの利用が一気に加速しました。1970年代には、VLSI(Very-Large-Scale Integration:超大規模集積回路)技術の登場により、数百万個のトランジスタが集積されたチップが実現し、パーソナルコンピューターの普及に大きく貢献しました。
こうした集積技術の急速な進化は、「ムーアの法則」として広く知られています。インテル社の共同創業者ゴードン・ムーアは、1965年、「ICの集積度は18ヵ月ごとに2倍になる」と発言し、この予測は驚くほど正確でした。それ以来、半導体技術の進化はとどまることなく、現在では、100nm以下の非常に微細なサイズでの競争が繰り広げられています。
ICの重要な役割
ICは、電子機器の設計と機能性に革命をもたらしました。ここでは、ICが果たしている役割について紹介します。
電子機器の小型化とコスト削減
ICは、電子機器の飛躍的な小型化と、製造コストの削減を可能にする上で重要な役割を担っています。
従来の電子機器では、個々の部品を個別に配置し、それぞれを物理的に接続する必要がありました。しかし、IC技術により、これらの部品が1つのチップ上で機能するようになったため、使用する材料の量が大幅に削減されました。部品数の減少は、組み立て労力の軽減と製造プロセスの効率化をもたらし、大量生産を容易にしています。
その結果、消費者は以前よりも手頃な価格で、高機能な電子製品を手に入れられるようになりました。
複雑で高度な機能を持つ電子機器の開発
プロセッサー、メモリ、センサーなど複数の機能を1つのチップに統合し、複雑で高度な機能を持つ電子機器を開発できることも、ICが担っている重要な役割のひとつです。
例えばスマートフォンは、この恩恵を受ける代表的な製品です。多数のICを組み込むことによって、コンパクトなデバイスでありながらも、通信、ナビゲーション、エンターテインメントなどのさまざまな機能を備えています。今後もIoT製品など、ICにより複雑で高度な機能を持つデジタル製品がますます増えていくでしょう。
データ処理速度の向上と消費電力の低減
データ処理速度の向上と消費電力の低減も、ICが担う重要な役割です。
ICの使用は電子部品間の接続距離を短縮し、信号の伝達速度を向上させることで、電子機器の全体的な性能を飛躍的に向上させます。これにより、高速で効率的なデータ処理が可能となり、スマートフォンやコンピューターが、複雑な計算やデータ分析を瞬時に行えるようになり、ユーザー体験が大幅に改善されるでしょう。
さらに、IC技術による接続距離の短縮は、デバイス全体の消費電力を低減させる効果ももたらします。電力消費の抑制は、特にモバイルデバイスにおいて重要なポイントです。消費電力の抑制により、バッテリー持続時間が大幅に延長されれば、ユーザーはデバイスをより長く使用できるようになるからです。
低電力設計は、環境に対する影響を減らすという点でも価値があります。ICの技術的進歩は、将来の電子機器の性能をさらに向上させながらも、環境に優しい社会の実現につながると考えられています。
ICの仕組み
ICがその機能を果たすための基礎となるのは、半導体技術です。半導体は電気をよく通す導体と、電気を通さない絶縁体の中間的な性質を持つ物質で、これにより電気の流れを効率的に制御することができます。
最も一般的に用いられる半導体の素材は、シリコンです。純粋なシリコンにわずかな不純物を加えることで、トランジスタと呼ばれるスイッチング装置を製造することが可能です。トランジスタは、電気信号のオン・オフを切り替えることによってデジタルデータを処理したり、信号を増幅したりするのに不可欠な電子部品で、デジタル信号の処理、増幅、スイッチングなど多岐にわたる機能を担います。
ICの製造は、極めて清潔な環境であるクリーンルームで行われます。シリコンウェーハーと呼ばれる円盤状の基板の上に、光リソグラフィという技術を用いて細かい回路パターンを作り出し、トランジスタやそのほかの電子部品を形成するのが、主なICの製造プロセスです。この過程で、トランジスタだけでなく、抵抗、コンデンサー、ダイオード、それらをつなぐ配線がチップ上に集積されます。これらの電子部品は非常に精密に配置され、それぞれが電子回路の機能を果たします。
このようにして集積されたICは、コンピューターのデータ処理、スマートフォンの情報伝達、家電製品の制御など、幅広い電子機器を動作させることが可能です。これらのチップは、たった数mm²のスペースに、数百万から数十億個のトランジスタを含む複雑な回路を持ち、その小さなサイズと高い性能で現代の電子機器の多機能化と小型化を実現しています。
ICの主な種類
ICは扱う信号の形式によって、主にデジタルIC、アナログIC、ミックスドシグナルICの3つのカテゴリーに分けられます。ここでは、3つの種類のICについてそれぞれ紹介します。
デジタルIC
デジタルICは、「0」か「1」という離散的なデジタル信号を処理するよう設計されているICです。これらはトランジスタやダイオードのスイッチング動作を利用して、論理演算を行うために使用されます。このタイプのICは、コンピューターやスマートフォン、そのほかの多くの電子機器の心臓部として機能し、高速かつ正確な計算能力を提供することが可能です。
アナログIC
アナログICは、光、音、圧力、温度、心拍数など、連続的な信号を処理するために設計されたICです。トランジスタの増幅機能を利用して、入力信号と出力信号の処理を行います。アナログICは、信号の増幅、フィルタリング、電力変換などに使用され、オーディオ機器、無線通信、電源管理などの分野で広く利用されています。
ミックスドシグナルIC
ミックスドシグナルICは、デジタル信号とアナログ信号の両方を扱うことができるICで、同一のIC上にアナログ回路とデジタル回路が同じチップ上に共存しています。これにより、アナログ信号をデジタル形式に変換したり、その逆の変換を行ったりすることが可能です。ミックスドシグナルICは、主にデジタル信号処理とアナログ信号処理の橋渡しをする役割を担っているといえます。
ICの構造
ICチップは、シリコンなどの半導体素材から作られた極めて小さな部品です。このチップ上には、電子機器の基本的な動作を支えるトランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサーなどの電子部品が集約されています。これらの電子部品は複雑な電子回路を形成し、論理演算やデータ処理、信号増幅など多様な機能を果たしています。
ICチップと同様に電子機器に搭載されるパッケージは、ICチップを衝撃、水分、ほこりなどの外部環境から保護して封入する外殻です。放熱やプリント基板(PCB)への実装性を向上させる役割も果たします。主にセラミックや有機素材、金属素材などの材質でできており、ICチップを安全に封入することができます。
また、リードフレームは、パッケージに取り付けられた金属製の端子です。チップの内部回路を、外部のプリント基板やほかの電子部品と電気的につなぐ役割を担います。
このように、ICはこれらの部品が組み合わさることで、電子機器に不可欠な処理機能を提供しているのです。
ICの選び方
電子機器を製作する際、ICの選定はデバイスの性能、コストパフォーマンス、信頼性に大きく影響します。適切なICを選ぶことは、機能要件と予算のバランスを見極め、最適な製品を作り出すためにも不可欠です。最後にICを選ぶ際に考慮すべき重要なポイントを3つ紹介します。
性能で選ぶ
ICを選ぶポイントのひとつは、期待される性能が製品仕様と一致しているかを確認することです。
デジタルICの場合は処理速度やメモリ容量、アナログICは信号の増幅率やノイズに対する耐性、ミックスドシグナルICではアナログとデジタルの処理能力のバランスが重要な評価指標になります。
これらの指標をデータシートと照らし合わせ、製作する電子機器に最適なICを選ぶことが大切です。
コスト効率で選ぶ
プロジェクトの予算は、ICの選定に大きく影響します。ICの単価だけでなく、実装コストや必要な外部部品の数、消費電力による運用コストも考慮することが必要です。
大量生産を前提とする場合は、スケールメリットによるコスト削減が期待できるICを選ぶことが重要です。コスト効率のよいICを選ぶことで、製品の市場競争力を高められ、持続可能な供給が可能となります。
信頼性と耐久性で選ぶ
製品の信頼性と耐久性を確保できるかどうかという点も、ICを選ぶ際に欠かせないポイントです。そのためには、選定するICが過酷な環境条件下でも安定して機能するかどうかを検討することが重要です。
温度変動、湿度、振動へのICの耐性は、テストデータやデータシートにより評価します。また、メーカーによる品質保証や市場での実績・評価も重要な選定基準です。信頼性の高いICは、メンテナンスコストを削減し、製品の総合的な評価を高めることにつながります。
エレクトロニクス製品の専門商社であるテスコムが、ICの購入をサポートします
ICは、現代の電子機器や電気製品に不可欠な電子部品です。製品に求められる機能を実現し、パフォーマンスを向上させると同時に、製品の小型化も可能にします。ICを選定する際には、性能、コスト効率、信頼性という3つの重要な観点を総合的に考慮することが大切です。これらの基準を慎重に検討することで、最終製品の完成度や品質の高さが保証されるでしょう。
テスコム株式会社は、ICをはじめとする各種電子商材を取り扱うエレクトロニクス製品の商社です。商社でありながら、専門性の高い技術部門・品質管理部門を有し、テスコム基準で選定した高品質なエレクトロニクス製品を提供しています。国内外を問わず幅広い製造サプライヤーと連携し、独自の購買ルートにより、お客様のニーズにマッチしたICの購入をサポートします。ICの購入に関するご相談やお見積もりは、テスコムまでぜひお気軽にお問い合わせください。
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