液晶とは?仕組みや種類、選び方などをわかりやすく解説
2024.02.29
ディスプレイに活用されている液晶は、今や現代社会にとって欠かせないものですが、液晶の仕組みや種類、その発見から応用までの歴史について理解している方はそう多くはないのではないでしょうか。
この記事では、液晶の基本的な知識から、液晶ディスプレイ(LCD)の選び方までをわかりやすく解説します。
目次
液晶は、固体(結晶)と液体の中間にある状態の物質
液晶は、固体の結晶と液体の特性を併せ持つ独特な物質です。この物質は、一定の秩序を保ちながら規則正しく並ぶ結晶のような光学特性に加えて、液体のような流動性を持っています。
液晶の最大の特徴は、電圧を加えることでその光学的特性が変化する点です。例えば、液晶ディスプレイでは、この液晶の性質を利用して画像を表示しています。電圧をかけることで液晶分子の配列を変化させて画素ごとに光の透過率を制御し、画面上でさまざまな画像を作り出すことが可能です。
さらに、液晶は温度変化によっても性質が変わるため、温度センサーとしても利用できます。このような特徴を持つ液晶は現在、テレビやスマートフォンといったディスプレイへの用途のほか、光学機器など幅広い分野の製品に応用されています。
■温度による液晶の変化
液晶の歴史
液晶の歴史は、19世紀までさかのぼります。1888年、オーストリアの植物学者フリードリッヒ・ライニッツァーは、コレステロールと安息香酸のエステル化合物を研究している際、加熱した化合物が2度融解することを偶然発見します。その化合物は加熱すると、最初は濁った液体に、さらに加熱すると今度は透明な液体になりました。
ドイツの物理学者オットー・レーマンは、この液状物質が液体と結晶の中間の性質を持つことを明らかにし、「液体のように流れる結晶」として、「液晶(Liquid Crystal)」と名付けました。これが現在ディスプレイなどで幅広く使用されている液晶の始まりとされています。
その後、1958年に液晶の性質を利用した体温計で初めて技術へ応用されたのを皮切りに、1968年にはアメリカ・RCA社のジョージ・H・ハイルマイヤーが液晶を用いた表示装置を開発。1973年にはシャープが液晶を利用した電卓を発売し、1984年にはエプソンが世界初の液晶カラーテレビを発売するなど、日本をはじめ世界中で液晶の研究や技術開発、製品化が盛んになりました。
1990年代から2000年代にかけては液晶技術の進化が続き、現在ではノートPCやテレビ、スマートフォンなどに使用される表示ディスプレイの材料として液晶が広く普及したのです。
液晶の種類と構造・特性
液晶にはいくつかの種類があり、それぞれ構造や特性が異なります。主な液晶の種類には、「ネマチック液晶」「スメクチック液晶」「コレステリック液晶」があります。各液晶の構造や特性について解説します。
■各液晶の構造
ネマチック液晶
ネマチック液晶は、最も一般的なタイプの液晶です。分子が長くて細い棒状で粘性が低く、長軸方向に自由に動くことができます。
ネマチック液晶の最大の特徴は、電圧を加えることで分子の配向を変えることができる点。電圧がない状態では、分子は一定の方向にそろっており、光を特定の方向にしか通しません。
しかし、電圧を加えると分子の向きが変わり、光の通過経路が変化します。この性質を利用して、画像を表示しているのが液晶ディスプレイです。
液晶ディスプレイの中でも、ネマチック液晶は「TN(Twisted Nematic)型」の液晶ディスプレイに広く採用されています。
スメクチック液晶
スメクチック液晶は、分子が結晶相のような層状構造を持つ液晶の一種です。分子配列の規則性が高く、細長い分子が特定の平面内で整然と並んでいて、この平面が積み重なる形で構造化されています。分子は層内で自由に動けるものの、層間での移動は制限されるため、安定的な状態を保つのが特徴です。
また、ネマチック液晶に比べて非常に粘性が高く、温度や圧力に対する耐性が高いことも特徴のひとつです。そのような特性から、特殊なディスプレイ技術や光学素子、センサーなどの分野で利用されています。
スメクチック液晶の中にも分子の傾きの違いなどいくつかの異なるタイプがあり、スメクチックA型やB型といったものが存在します。
コレステリック液晶
コレステリック液晶は、一方向に向いた液晶分子の層がねじれて螺旋状に配列した液晶で、特に光の反射特性が特徴的です。分子が螺旋状に配列することで、特定の波長の光を選択的に反射する性質を持ち、その波長が温度や分子の構造によって変化し、色の変化が起こります。
この色の変化の特性を利用した温度センサーや、選択的な光の反射を利用した光学デバイスなどが開発されています。
また、コレステリック液晶の鏡面反射性を利用したディスプレイ技術も研究されており、ディスプレイの省エネルギーと高解像度の実現が期待されています。
液晶ディスプレイの主な種類
液晶ディスプレイの種類には、前述の「TN型」のほか「VA型」「IPS型」「TFT型」などがあります。ここでは、それぞれの種類が持つ特徴についてご紹介します。
TN型ディスプレイ
TN型ディスプレイは1970年代に開発された、最も一般的で手頃な価格の液晶ディスプレイです。この技術では、液晶層内の分子のねじれを電圧によって調整し、背面からの光の通過量を変化させることで画像を表示します。
製造コストの低さや応答時間の速さなどのメリットがありますが、視野角によって色や輝度が大きく変化するほか、コントラスト比が低いため、デューティ比の高さや色の再現性、広い視野角が求められる用途には適していないとされています。
VA型ディスプレイ
VA(Vertical Alignment)型ディスプレイは、電圧がオフの状態で黒色を、オンの状態で明るい白色を表示するノーマリーブラック方式の液晶パネルです。このディスプレイでは、液晶分子を垂直から水平方向に回転させることで、バックライトの光の透過率を制御します。これにより、高い遮光性能と優れたコントラスト比を実現し、深い黒色の表現が可能になります。
反応速度がやや遅いことや、視野角によって色や明るさが変わることが欠点とされていますが、最新の製品ではこれらの問題点を克服するための技術が採用されており、性能の向上が図られています。
IPS型ディスプレイ
IPS(In-Plane Switching)型ディスプレイもVA型と同じく電圧オフで黒く、電圧オンで白くなるノーマリーブラック方式と呼ばれる液晶パネルです。広範囲な視野角と、視野角による色彩や明るさの変化が少ないことが特徴で、どの方向から見ても色の一貫性が維持されます。
一方、IPS型ディスプレイは反応速度が若干遅れることがあり、動きの激しい映像には適していません。また、完全な光の遮断が難しく、結果としてコントラスト比が低めです。
高い性能を実現しようとすると製造コストがかかるため、その結果、製品価格も比較的高価になるという点もデメリットといえます。
TFT型ディスプレイ
TFT(Thin Film Transistor)型ディスプレイは、画面上の各ピクセルを個別に制御する薄膜トランジスタが組み込まれたアクティブマトリックス方式と呼ばれる液晶ディスプレイです。画像の精細さや色の再現性が高く、動画や高解像度のグラフィック表示に適しています。
なお、IPS型やVA型のディスプレイは、TFTの技術がベースになっています。
TFT型ディスプレイは、その高い解像度と速い応答時間のため、スマートフォンやタブレット、ノートPC、デスクトップモニターなど、採用されるデバイスも多彩です。
また、TFTはバックライトの光を効率的に利用するため、画面が明るく鮮明な上に低消費電力でバッテリー駆動のモバイルデバイスにも適しています。ただし、TFT型ディスプレイは製造コストが高いため、製品価格も高くなるのが一般的です。
液晶ディスプレイの選び方
液晶ディスプレイを選ぶ際には、使用目的に合ったパネルの種類、解像度、反応速度などを確認して選ぶことが大切です。
ここでは、電子機器製作メーカーの担当者が、モノクロとカラーの液晶ディスプレイを選ぶ際のポイントについて解説します。
モノクロ液晶ディスプレイを選ぶ際のポイント
モノクロ液晶ディスプレイを選ぶ際は、ディスプレイのサイズや構造のほか、インターフェースなどを確認してから選ぶことが重要です。ラフ図やLCD・LCMチェックシートを事前に準備しておくことで、用途に応じた最適な選択ができます。ここでは、モノクロ液晶ディスプレイを選ぶ際の各種ポイントについて紹介します。
・外形寸法・構造を考慮する
液晶ディスプレイを選ぶ際は、外形寸法や構造がディスプレイの設置場所や用途に適しているかを考慮することが大切です。購入前に、設置スペースや構造についてしっかりと確認しておくといいでしょう。
・ラフ図を準備する
液晶ディスプレイの設置前にラフ図を作成し、配置や取り付け方法を考えておくことが重要です。これにより設置作業を効率化させたり、作業時のトラブルを回避したりすることができます。
・電気的制約(入力電圧、消費電流)を確認する
液晶ディスプレイを選ぶ際には、入力電圧や消費電流の制約を確認し、使用環境に適したものを選びましょう。それによって、機器の安全性や効率性が向上します。
・耐久性が高いものを選ぶ
液晶ディスプレイは長期間使用されることが多いため、特に耐久性が高いものを選びましょう。また、品質の高い製品や信頼性のある製品を選ぶことも重要なポイントです。
・適切なインターフェースを選択する
適切なインターフェースを選ぶことも、液晶ディスプレイ選びの大事なポイントです。特にMCU(マイコン)と接続するために、適切なインターフェースがあるものを選択することが大切です。
・LCD・LCMチェックシートを活用する
液晶ディスプレイのスペックを一覧できるLCD・LCMチェックシートには、液晶ディスプレイの各種仕様や対応インターフェースがリストアップされています。具体例として、画面サイズや解像度、視野角などの情報がまとめられているため、これらを活用することで、適切なディスプレイを選ぶことができるでしょう。
カラー液晶ディスプレイを選ぶポイント
カラー液晶ディスプレイ選びでは、解像度や応答速度のほか、使用環境なども重要なポイントです。それぞれのポイントについて、具体的にご紹介します。
・パネルサイズは用途やスペースで選ぶ
パネルサイズ(インチ)は、用途や設置場所などに応じて選ぶのがポイントです。例えば、スマートフォンなど小型の端末には小さいパネルを、大型のディスプレイ用には大きいパネルを選ぶなど、用途やスペースを十分に考慮した上で、適切なサイズを選びましょう。
・適切な解像度を選択する
解像度は画面を表示する画素数(ピクセル)の密度のことで、画像の鮮明さや細部までの再現性に影響します。解像度が高いほどディスプレイに表示される画像が鮮明になるため、用途に応じた解像度を選ぶことが大切です。
解像度の具体例としては、フルHD(1,920×1,080ピクセル)や4K(3,840×2,160ピクセル)などが挙げられます。
・インターフェース仕様を確認する
モノクロ液晶ディスプレイと同様、カラー液晶ディスプレイもインターフェースの確認が重要です。MCU(マイコン)との接続が可能かどうかを必ず事前に確認するようにしましょう。
・用途に応じてタッチパネルの有無を選択する
タッチパネルの有無は用途次第です。例えば、操作性を重視したい場合はタッチパネル付きが望ましいですが、映像を鑑賞するだけなら不要かもしれません。用途を明確にすることで、最適な選択ができます。
液晶ディスプレイの購入は、技術サポートが充実するテスコムへご相談ください
テスコムは50年以上前にケーブルメーカーとして創業し、製造業を経て商社となった今でも、これまでの経験や知見、技術力を活かしたご提案が可能です。専門性の高い技術部門・品質管理部門が、豊富な品揃えの中からお客様のニーズや用途に合った最適な液晶ディスプレイ選びをお手伝いいたします。
また、技術面でのサポートも充実しており、ご購入前も後も安心してご利用いただくことが可能です。液晶ディスプレイの購入を検討する際には、テスコムまでお気軽にご相談ください。
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