タッチパネルとは?抵抗膜方式と静電容量方式の違い、仕組みを解説
2023.12.25
スマートフォンやタブレット端末、ゲーム機器、銀行のATMなど、指やペンなどで操作ができるタッチパネルがさまざまな端末で採用されています。
この記事では、タッチパネルの基礎知識のほか、その主な種類である抵抗膜方式と静電容量方式の違いや仕組みについて、イラスト図解でわかりやすく解説します。
目次
タッチパネルとは、指やタッチペンで操作できるディスプレイのこと
タッチパネルとは、画面に指や専用のタッチペンをふれることで操作ができるディスプレイです。この技術は、スマートフォンやタブレット、パソコンなど、さまざまな電子機器に使われています。
タッチパネルは、直感的な操作性や簡単なインターフェースが魅力で、従来のボタンやキーボードなどの物理的な操作方法に比べて、操作性が高いというメリットがあります。具体例として、スマートフォンの画面を指でなぞることで、地図を拡大縮小したり、アプリを起動したりできるのがタッチパネルの特徴です。
タッチパネルの主な種類
タッチパネルの主な種類には、「抵抗膜方式(RTP)」と「静電容量方式(CTP)」の2種類があります。それぞれ、特徴と用途が異なりますので、自分の使用目的に合ったタイプを選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの特徴や違いについてご紹介しましょう。
抵抗膜方式
抵抗膜方式は、2枚の透明な導電膜を重ね合わせたもので構成されており、指や専用のタッチペンで強く押すことで接触が認識される仕組みです。手袋をしていても操作が可能なことから、製造業の現場や衛生面を重視する医療機関などで活用されています。
しかし、あまり強く押しすぎると、膜が破損したり、操作が認識しづらくなったりする問題があります。操作感は静電容量方式よりも劣るため、素早い操作には向いていませんが、耐久性やコスト面で優れているタッチパネルです。
静電容量方式
静電容量方式は、ガラスの上に導電性の膜が貼られた構造で、指が近づくことで静電容量が変化し、それを検知することによりタッチ操作が可能となります。軽いタッチで反応するため、操作感が良く、マルチタッチにも対応しています。スマートフォンやタブレットなど、多くの電子機器で採用されています。 ただし、手袋をしていると接触が認識されにくいため、手袋使用が前提の場面での利用には適していません。コスト面で抵抗膜方式よりも高くなる点がデメリットですが、優れた操作性が求められる場合に適しているタッチパネルです。
抵抗膜方式と静電容量方式の違い
抵抗膜方式と静電容量方式は、タッチスクリーン技術において異なる動作原理と構造を持つ方式です。抵抗膜方式は、2枚の透明な導電膜が重なった構造で、指などの物体がふれることで電圧が変化し、その位置が検出されます。
一方、静電容量方式は、電極と絶縁層を使い、指が近づくと静電容量の変化が検出される仕組みです。
抵抗膜方式の動作原理
抵抗膜方式の動作原理は、2枚の透明な導電膜が接触することで電圧が変化し、その変化を検出することで位置情報を得るというもの。上下に重なった導電膜は、通常は接触していませんが、指やスタイラスなどの物体がふれると、接触部分で電気的結合が生じます。
これにより、電圧が変化し、横軸と縦軸の座標情報が得られます。得られた座標情報は制御装置に送られ、画面上の操作が実行されます。
上図では、タッチパネルを押下しない場合、上下の透明電極(ITO)は接触していません。一般的に、光学特性の高いPETフィルムを弧になるように膨らませますが、フラットに近い構造のものもあります。押下していないときに上下電極が接触しないようにしているのが、ドットスペーサーと呼ばれる小さなドーム形状の絶縁物です。
タッチパネルを押下すると、上下の透明電極が接触します。ドットスペーサーは、押下していない状態で上下電極の接触を防止するためと、押下した範囲を特定する役割も持っています。
抵抗膜方式の構造
抵抗膜式タッチパネルは、2枚の透明電極が上下に重なっている構造です。表側には透明電極を成膜したPETフィルムを、裏側には透明電極を成膜したガラス基板を使用します。ガラス基板の透明電極の表面には、ドットスペーサーを形成します。
PETフィルム、ガラス基板それぞれの透明電極の両端に銀ペーストで電極を形成し、縦方向間をY電極、横方向間をX電極とし、裏表の電極が交差するように配置します。 さらに、それぞれの電極に電圧を印加したり、電圧値を検出したりするための配線を銀配線で引き回し、FPC(フレキシブル基板)を介して入出力できるような構造になっています。
抵抗膜方式のメリット
これまで見てきたように、抵抗膜方式は幅広い用途に利用されているタッチパネルのひとつです。ここでは、抵抗膜方式のメリットを3つご紹介します。
製造コストが低い
抵抗膜方式のタッチパネルは、比較的安価な材料で構成できるため、製造コストが抑えられるのがメリットです。そのため、低コストでの導入を必要とする現場や用途での利用に適しています。
製造やメンテナンスが容易
抵抗膜方式は構造が単純でシンプルなため、ほかの方式に比べて、製造やメンテナンスがしやすいというメリットがあります。そのため、大量生産に適したタッチパネルといえます。
ペンや手袋などでも操作できる
抵抗膜方式は、手指で直接操作できるのはもちろん、手袋をしていたり、濡れていたりする手指のほか、ペンなど絶縁性の物質でも操作が可能な点もメリットです。そのため、製造業や医療現場などでの利用に適しています。
抵抗膜方式のデメリット
一方で、抵抗膜方式にはデメリットもあります。ここでは、そのデメリットを3つご紹介します。
パネルの透明度が低い
抵抗膜方式のタッチパネルのうち、フィルム-ガラス構造のものは、フィルムにPETを使用するため、ガラスに比べるとパネルの透明度が低くなるという特性があります。そのため、ほかの方式に比べると、表示品質がやや劣るという点がデメリットです。
耐久性や耐衝撃性が低い
抵抗膜方式は、耐久性や耐衝撃性の低さがデメリットです。パネルの表面がやわらかく、頻繁な使用による摩耗や圧力の影響で透明電極の膜に傷が付きやすく、結果としてタッチされた位置の測定精度が低下するおそれがあります。
マルチタッチができない
抵抗膜方式のタッチパネルは、一般的にマルチタッチ(同時に複数の点を感知する機能)には対応していなません。そのため、シングルタッチしかできず、ほかの方式に比べて操作性に劣る点がデメリットといえます。
抵抗膜方式の製造工程
抵抗膜式タッチパネルは、透明電極が成膜されたPETフィルムのカットから始まり、レジストの塗布、パターニング工程など、さまざまな製造工程を経て生産されます。
ここでは、抵抗膜式タッチパネルの製造工程の流れを、わかりやすく図解します。
静電容量方式の動作原理
静電容量方式のタッチパネルは、指とタッチパネルのあいだで微細な静電容量の変化を検出することによって動作する仕組みです。指がタッチパネルの表面にふれると、人体が持つ導電性により静電容量が変化し、この変化をセンサーが検出してタッチした位置を特定します。この静電容量の変化を検出するのが、静電容量方式の特徴です。 この方式は高い感度と正確性を持ち、マルチタッチ操作にも対応しているため、スマートフォンなどの端末を中心に広く採用されています。
静電容量の検出方式は、「相互容量方式」と「自己容量方式」の2種類です。
相互容量方式では、送信用と受信用の2つの電極を使用します。一方の電極は電界を生成し、もう一方は電気力線を吸収する役割を担うため、両電極間には仮想的なコンデンサが形成されます。手が近づくと、手と電界のあいだに疑似的なコンデンサが生じ、その結果起こる静電容量の減少を検出することで、タッチを認識することが可能です。
一方の自己容量方式は、自己で電界を発生させることができる電極を使用します。手が近づいた際に、電界と手のあいだに疑似的なコンデンサが形成され、その結果発生する静電容量の増加を検出することで、タッチが認識されるのがこの方式の基本原理です。
相互容量方式は格子状に配置したセンサー同士のあいだに発生した相互容量の変化を、自己容量方式はセンサー自体に発生した自己容量の変化を検出し、タッチの正確な位置を特定することができます。
また、静電容量方式は信号の変化によって、指が離れたときのリリースも検出することが可能です。これにより、静電容量方式のタッチパネルではマルチタッチに対応することができます。
静電容量方式の構造
静電容量方式のタッチパネルの構造は、タッチする表面パネル(カバーレイ)と、センサー電極が形成されているセンサーに分けられます。カバーレイはカバーガラスや、カバー樹脂などを選定可能です。
一方、センサー電極は、ガラスやPETフィルムを選定できます。センサー電極は、ガラスの両面に形成する方式や、PETフィルムの片側にセンサー電極を形成したものを2層構成にする方式など、用途や機器の制約に合わせて選定することが可能です。
上の図は、カバーガラスがガラス製、センサーパターンをPETフィルム2枚で構成した「GFFタイプ」と呼ばれる静電容量式タッチパネルの構造図です。
センサーパターンはPETフィルムの片面に透明電極が成膜されているものを用い、任意のセンサーパターンを形成します。これを二層構造として、2枚のPETフィルムをOCAという光学透明接着剤で貼り付け、カバーガラスも同様にセンサーフィルムにOCAで貼り合わせます。
また、コントローラICは、タッチ位置を検出するためにセンサーに電圧をかけ、静電容量の変化値をもう一方のセンサーで受信し、座標値を計算する役割です。これを実装したFPCをセンサーフィルムの入出力端子に熱圧着で接着したものが、GFFタイプのタッチパネルになります。
静電容量方式のメリット
静電容量方式のタッチパネルには、抵抗膜方式とは異なるメリットを持っています。ここでは、静電容量方式が持つメリットを4つご紹介します。
タッチ感度や操作性が高い
静電容量方式のタッチパネルはタッチ感度が高く、ほんのわずかなタッチにも素早く反応します。また、タッチ位置の特定が正確で、操作ミスが少ないなど、操作性の高さもメリットのひとつです。そのため、モバイル端末だけでなく、さまざまな産業や医療現場などで幅広く活用されています。
マルチタッチが可能
静電容量方式のタッチパネルでは、複数の指を使ったマルチタッチ操作が可能です。これにより、同時タッチやピンチズーム、スワイプなどの複雑な操作ができる点も、静電容量方式のメリットといえます。マルチタッチは、特にスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどでの利用に最適な機能といえるでしょう。
傷や汚れなどに強い
静電容量方式のタッチパネルは、ガラス製で表面が硬く、傷や汚れ、水滴などに強いため、長期間の使用が可能です。そのため、ハードに使われる可能性がある銀行のATMや自動販売機など、産業用途にも利用されています。
パネルの透過率が高い
静電容量方式のタッチパネルは、抵抗膜方式と比べてパネルの透過率が高く、カラーディスプレイの上に組み込んでも視認性の良い画面を表示することが可能です。 ただ、大型化が難しいため、主にスマートフォンやタブレットなどに積極的に用いられるようになり、モバイル端末の普及に合わせて急速に利用が広がりました。
静電容量方式のデメリット
操作性やパネル透明度の高さなど、静電容量方式には数々のメリットがありますが、デメリットも少なからずあります。ここでは、静電容量方式が持つ4つのデメリットについてご紹介します。
手袋では操作できない
静電容量方式は、パネル表面との電気容量の変化を検出して動作するため、指など導電性のある物質以外では操作を感知できません。そのため、手袋をはめた状態では、操作できない点がデメリットといえます。ただし、静電容量方式のタッチパネルに対応した手袋も販売されており、必要に応じてそのような手袋を活用することで、デメリットを補うこともできます。また、産業機器用のパネルで手袋の種類が限定される場合は、感度を調整することにより手袋をはめた状態での操作が可能です。
コストが高い
静電容量方式は、抵抗膜方式よりも製造コストが比較的高いことがデメリットのひとつとして挙げられます。コストが高い理由としては、静電容量方式のタッチパネルに使用している透明な導電性材料が高価であるためです。また、OCA(光学透明接着剤)を使用することや、センサーパターンが微細であること、製品の透過率が高いことなどから、外観規格が厳しいこともコストが高くなる要因のひとつといえます。
静電容量方式のタッチパネルの導入には、コスト面も考慮して検討することが大切です。
ノイズによる誤作動のおそれがある
静電容量方式のタッチパネルでは、その動作原理上、ノイズの影響を受けやすく、特に製造現場などではノイズによる誤作動のおそれがある点がデメリットです。
ただし、一次変調された変調波を高速でホッピングする「周波数ホッピング」技術を用いることで、誤作動を防ぐことができます。
大型化が難しい
静電容量方式は、複数の電極パターン上の容量変化を読み取ることで、タッチ位置を検出する方式です。そのため、入力面が大きくなれば自ずと必要なセンサーの数が増え、コントローラの入出力端子数も限界を迎えるなどの問題が発生します。こうした問題から、パネルの大型化が難しいとされるのもデメリットのひとつです。
静電容量方式の製造工程
ここでは、透明電極が両面に成膜されたガラス基板を貼り合わせた構造を持つ「GGタイプ」の静電容量方式の製造工程をご紹介します。カバーガラスの印刷工程から始まり、センサーガラスやパターニングの作成、FPCの圧着、カバーガラスとセンサーガラスの貼り付けまでを図解にしてわかりやすく解説します。
タッチパネルの購入は、専門性と技術力を誇るテスコムへご相談ください
ここまで、タッチパネルの方式のうち、抵抗膜方式と静電容量方式について、その特徴やメリット・デメリット、製造工程などを見てきました。
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