LCDとは?液晶ディスプレイの仕組みや種類、選び方を解説
2023.12.22
LCD(液晶ディスプレイ)は、ディスプレイ市場の中でも定番のひとつです。しかし、電子機器製作メーカーに勤める若手エンジニアの中には、LCDのことを実はあまりよく知らないという方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、LCDの主な種類や構造、特性などについて図解でわかりやすく解説するほか、LCDを選ぶ際のポイントについてもご紹介します。
目次
LCDとは、液晶の性質を利用した表示装置のこと
LCDとはLiquid Crystal Displayの略称で、日本語では「液晶ディスプレイ」を指します。電圧をかけると分子の向きを変える液晶の性質を利用した表示装置で、ディスプレイにガラスを使い、液晶の層を挟み込む方法で構成されているのが特徴です。
LCDの仕組みは、バックライトからの光が液晶を透過し、赤・緑・青のカラーフィルターを通過して色が作り出されます。LCDはテレビやパソコンのモニター、スマートフォンなど多くのデバイスに使用されており、最近では高解像度や高精細、高輝度な製品も開発されるなど、数あるタイプの中でも最も多く採用されているディスプレイの一つです。 ディスプレイの種類によりバックライトにLEDやCCFL(冷陰極管)などが使用されます。それぞれ特性が異なりますが、LCDの特徴としては、薄型で軽量、省エネルギー、広い視野角といった点などが挙げられます。
LEDの特徴
LEDとはLight Emitting Diodeの略称で、日本語では「発光ダイオード」と呼ばれます。LEDは半導体の一種で電気を流すと発光する特性があり、長寿命で燃焼効率が高く、環境に優しいとされています。
LEDの特徴は色の種類が豊富で、発熱が少なく、省エネルギーでの運用が可能なこと。小型で軽量、デザイン性が高いLEDは、照明器具やディスプレイのバックライトなど、さまざまな用途で使われています。
LCDとLEDとの違い
LCDとLEDを使ったディスプレイは、画像を表示するための技術が異なる点が大きな違いです。
LCDはバックライトからの光を偏光フィルター、カラーフィルター、液晶層を通過させることで色付きの光を生成します。この仕組みを「ピクセル(画素)」と呼び、このピクセルがいくつも集まってディスプレイを形成します。解像度として一般的なのは、HD(横1,280×縦720ピクセル)やフルHD(横1,920×縦1,080ピクセル)です。 一方、LEDディスプレイは、液晶層やフィルターの代わりに直接色付きの光を発するLEDを使用します。各LEDが個別のピクセルとして機能するため、LCDと比べてLEDディスプレイは構造がより単純です。そのため、LEDディスプレイはより自由度の高いサイズや形状で製造できるのが特徴です。
LCDの主な種類
LCDには、主に「TN型」「VA型」「IPS型」といった種類があります。ここでは、それぞれのディスプレイの特徴についてご紹介します。
TN型ディスプレイ
TN(Twisted Nematic)型ディスプレイは、1970年代に実用化された液晶ディスプレイ技術です。この方式は、液晶層のねじれを電圧で制御し、バックライトの光の透過量を調整します。
主なメリットは、低コスト、高い電力効率、高速な応答速度、です。一方で、視野角による色や輝度の変化が大きく、コントラスト比が低いため、高dutyや色再現性、視野角の広さが重要な場合には不向きといえます。
VA型ディスプレイ
VA(Vertical Alignment)型ディスプレイは、電圧オフで黒を、オンで明るい白を表示する「ノーマリーブラック」のTFT液晶パネルです。この方式では、液晶分子を垂直から水平へ回転させてバックライトの光の透過率を調整します。その結果、高い遮光性と優れたコントラスト比を実現し、深みのある黒を表現することが可能です。
一方、応答速度が遅めで、視野角による色や輝度の変化が生じることがデメリットですが、最近の製品では、これらの問題を改善する技術が導入されています。
IPS型ディスプレイ
IPS(In-Plane Switching)型ディスプレイは、VA型ディスプレイと同じくノーマリーブラックのTFT液晶パネルで、178°という広い視野角と、視野角による色や輝度の変化が少ない点が最大の特徴です。これにより、画面をどの角度から見ても色の再現性が保たれるほか、全体的に性能が高いことも特徴のひとつです。
一方で、IPS型ディスプレイは応答時間がやや遅く、動きの速い映像には不向きな場合があります。また、完全な遮光が難しく、コントラスト比が低めになる傾向があります。そのほか、高性能な分、製造コストが高く、価格も比較的高めなこともデメリットです。
TN型・VA型・IPS型の違い
TN型ディスプレイは応答速度が速く、価格も安いのが強みといえますが、ほかに比べて視野角や色再現性が劣ります。VA型ディスプレイは視野角と色再現性が優れており、コントラスト比も高いですが、応答速度が遅いのがデメリットです。IPS型ディスプレイは視野角と色再現性が最も優れている一方、応答速度やコントラスト比が劣っています。
このようにLCDはディスプレイのタイプにより強みや弱みが異なるため、用途や好みによって適切なディスプレイを選択することが大切といえるでしょう。それぞれの特徴の違いは、下表のとおりです。
■TN型・VA型・IPS型の性能比較
TN型ディスプレイ | VA型ディスプレイ | IPS型ディスプレイ | |
応答速度 | 高速 | やや遅め | やや遅め |
視野角 | 狭い | 広いが色変化あり | 非常に広い |
色再現性 | 低い | 高い | 非常に高い |
コントラスト比 | 低い | 高い | 中程度 |
価格 | 安価 | 中程度 | 比較的高価 |
LCDの動作原理
LCDは、液晶分子を使用して画像を表示するディスプレイ技術の一種です。外部からの電気信号で間接的に液晶分子を制御し、光源となるバックライトから発する光を通すか遮断するかによって、明るさや色の濃淡で画像や文字を表示する仕組みになっています。
液晶ディスプレイの構造は、透明電極(ITO)でコーティングされた2枚のガラスで液晶層を挟む形になっており、電極間に電圧をかけることで液晶分子が動き、光の透過率を制御する仕組みです。透明電極の上には配向膜があり、その表面には液晶分子を整列させるための溝が作られています。
電界がかかっていない状態では、液晶分子は溝に沿った状態に配列されていますが、電圧がかかると液晶分子は立ち上がり、光の透過率が変化します。
さらに、液晶ディスプレイの応用には、偏光フィルム(偏光板)を上下に配置する構造が不可欠です。外光やバックライトの光は、偏光フィルムを通じて一定方向の光だけが透過し、液晶分子の向きによって光の向きが制御されます。偏光フィルムは上下で交差するように配置されているため、電源OFF時は液晶分子のねじれに沿って光が偏光板を透過し、画面は非点灯状態になります。
一方、電源ON時は液晶が立ち上がり、光を直進させるため、偏光フィルムを通過できず、画面は点灯状態になるのです。 このように、LCDは電圧の制御によって液晶分子の配列を変え、光の透過率を調整することで画像を表示する仕組みになっています。
LCDの構造・部材
LCDの構造を正面から見たのが、以下のイメージ図です。上下のガラスをシール剤で接着し、その隙間に液晶剤を真空注入し、封止剤で液晶注入口をふさぎます。
上下のガラスには表示用に透明電極を交差させ、上下で導通させるトランスファという構造を作って、外部から電圧を印加するために電極を出すのがLCDの一般的な構造です。
LCDの特性
液晶パネルは、その種類や構造によってコントラストや視野角、反応速度などが大きく影響されます。ここでは、LCDの特性についてそれぞれご紹介していきます。
コントラスト
コントラストは、画面上の最も明るい部分と最も暗い部分の輝度の比率を示し、この比率が高いほど鮮明でくっきりした画像が表示されます。LCDのコントラストは、液晶パネルの構造や液晶分子の特性、バックライトの性能などによって決まります。 LCDの中では、VA型が最も高いコントラストを実現できるディスプレイです。
LCDは、液晶分子にかける電圧によって液晶の立ち上がり具合が変わり、光の透過率も変わります。上図は、縦軸に輝度、横軸には液晶パネルに印加する電圧の関係を示したグラフです。選択波形は表示が点灯する電圧の波形を示し、非選択波形は非点灯部の電圧波形を示します。
TN型やIPS型に用いられるポジ型液晶の場合、選択部は表示が濃くなると輝度は低くなり、非選択部は輝度が高いことが理想です。コントラスト比は、非選択部(B2)/選択部(B1)で示します。
応答速度
応答速度とは、画面上の1画素(ドット)が、ある色から別の色に切り替わるまでの時間を指します。この速度は通常「ミリ秒(ms)」で測定され、ディスプレイの性能を示す重要な指標のひとつです。
一般的に、液晶ディスプレイの応答速度は、1画素が「黒→白→黒」に切り替わる際の応答速度と、「グレー→グレー」の中間階調の応答速度が併記されます。この切り替わる時間が速いほど、動画などの動きが滑らかに表示されます。動画の表示色は中間階調のものが多いため、動画の画質においては中間階調の応答速度が重要です。
応答速度は液晶パネルの種類や液晶分子の特性によって影響を受け、LCDではTN型やVA型ディスプレイが、応答速度の速いディスプレイとされます。
上の図は、液晶ディスプレイの応答速度を定義するものです。立ち上がり応答速度としてON波形入力後、選択部の輝度が10%に達した時点を立ち上がり時間(tr)、OFF波形入力後、選択部の輝度が90%に達した時点を立ち下がり時間(td)と定義します。
視野角
視野角とは、画面の中心から見てどれだけ横に広がる角度で色やコントラストが変わらずに見られるかを示す指標です。液晶パネルの種類によって視野角の広さは異なり、視野角が広いほど画質の劣化が少なくなります。LCDでは、IPS型が視野角の極めて広いディスプレイとして一般的です。
視野角の特性値は、ディスプレイを見る位置から、中心を基点に手前と奥、左右方向に対し、規定コントラスト以上の視野角度を示します。手前、奥方向をθ(シータ)、左右方向をΦ(ファイ)の記号で表します。
輝度・色度
LCDは輝度と色度の両方で高い表現力を持つディスプレイです。輝度はバックライトの光により画面が明るく表示されることで見やすさが向上する一方、色度はRGB(赤・緑・青)の各色の発光強度によってさまざまな色を鮮やかに表現できます。
これらの特性は、テレビやパソコン、スマートフォンなどのディスプレイで重要な要素です。高い色再現性を持つLCDでは、よりリアルな映像や美しい画像を楽しむことができます。
LEDバックライト付き液晶ディスプレイの場合は、バックライト特性も重要です。光源にLEDを使用したものが特性面や使いやすさの理由で、数多く採用されています。 上の表は、LEDバックライト付き液晶ディスプレイの輝度、色度を表したもので、電気特性にはLEDの順電圧、逆電流を記載します。これは依頼時に、制約に合わせてカスタマイズが可能です。また、輝度は液晶ディスプレイ表面の輝度を示し、輝度偏差は複数の測定ポイントの最小値/最大値の比で示します。
LCDの製造工程
LCDの製造工程は、洗浄したガラス表面にフォトレジストを塗布することから始まり、最後の機能検査・外観検査まで、長い工程を踏む必要があります。 ここでは、あらためてLCD構造の概略図をもとに、LCDの製造工程を図解します。
LCDの選び方
LCDを選定するには、どのようなポイントを押さえておけばいいでしょうか。ここでは、「モノクロLCD」と「カラーLCD」を選ぶ際のポイントをご紹介します。
モノクロLCDの選定方法
モノクロLCDの選定時には、ディスプレイで表示する内容や使用する環境を考慮した上で、適切な製品を選ぶ必要があります。具体的には、下記の要素を考慮して選ぶのが良いでしょう。また、モノクロLCDは一般的に、標準品ではなく、部分的なセミカスタムや100%オーダー仕様となるフルカスタムを作成することも可能です。
- ラフ図
希望するLCDのラフ図を用意できると、製品全体の形や配置などをメーカーが理解するのに役立ちます。 - 電気的制約(入力電圧、消費電流)
電気的制約は、デバイスを安全に使用するために重要です。入力電圧は、ディスプレイが正常に動作する範囲内で選択しましょう。消費電流もデバイスに過負荷をかけない範囲で選定することが大切です。 - 耐久性
LCDの耐久性は、長期間にわたって安定した表示を実現するために重要です。耐久性の高い製品を選択することで、メンテナンスの手間やコストを削減できます。 - インターフェース仕様
インターフェース仕様は、LCDをお客様のMCU(マイコン)と接続するために重要です。適切なインターフェースを選択することでデバイスとの互換性を確保し、スムーズな表示を実現できます。 - LCD・LCMチェックシートの活用
LCD・LCMチェックシートは、製品選定の際に役立ちます。チェックシートには重要な仕様や機能が記載されているため、比較検討が容易になり、適切な製品を効率的に選定することができます。
カラーLCDの標準品の選定方法
カラーLCD(TFT LCD)の標準品は、用途や環境に合った製品を選択することがポイントです。パネルサイズ、解像度、インターフェース仕様、耐久性など、重要な要素を総合的に検討しましょう。また、タッチパネルの有無も、使用シーンに応じて選択します。
ただし、カラーLCDパネルは、構造上複雑なため、カスタムで新規に制作すると、イニシャルコストが膨大にかかるため、一般的にはすでにある標準製品から選定することになります。
- パネルサイズ(インチ)
パネルサイズは、用途や設置スペースに合わせて適切なサイズを選択することが重要です。例えば、ポータブルデバイスには小型のパネルが、大型ディスプレイには大型のパネルが適しています。 - 解像度
解像度は、画面上に表示される画素数を示し、解像度が高いほど表示される画像が鮮明になります。用途に応じて適切な解像度を選択することが大切です。
例えば、映像を表示する場合は高解像度の製品が適しており、文字情報を表示する場合には低解像度の製品でも問題ありません。 - インターフェース仕様
インターフェース仕様は、LCDをお客様のMCU(マイコン)と接続するために重要です。適切なインターフェースを選択することで、デバイスとの互換性を確保し、スムーズな表示を実現できます。 - タッチパネルの有無
タッチ操作が必要な場合は、タッチパネル付きの製品を選択しましょう。タッチ操作が不要な場合には、コストを抑えるためにタッチパネルなしの製品を選ぶことが可能です。
LCDの購入は、専門性の高い技術担当者がそろうテスコムへご相談ください
テスコムでは、専門性の高いメーカー出身の技術担当者が窓口となり、お客様のニーズや用途に合った最適なLCD選びをサポートいたします。
また、アフターサポートも充実しており、ご購入後も安心してご利用いただくことが可能です。LCDの購入に関するご相談やお見積もり依頼は、テスコムまでお気軽にお問い合わせください。
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